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「ホーチミン」「ホーチミン」お正月の朝
 「 サイゴン 」( ホーチミン )

 十二月十日、「ナトラン」より「サイゴン」に向かって汽車で出発したが、貨車のため
扉をあけて発車した、薪を燃料にしているため火の粉が貨車の中に入り度々敷物の天幕
を焦した。翌十一日「サイゴン」に到着した。街は黄色一色で統一され道路は広く、ア
カシヤの並木が綺麗で目を見張るばかりである。全員サングラスを持ってきたが、物々
交換が、主だからバナナや椰子の実などと文換してしまって、今は誰一人持っていない。
安南の女達は、ピンロー樹の実を葉っぱに包んでかじっている。口の中はみんな残っ赤
にしてそれをアスファルトの上にチュチュと吐いているため舗装道路は何処も赤く染ま
っている。ハッカの様で煙草がわりにしている模様である。