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4 事務見習時代

事務見習とは給仕の事で、仕事は朝の掃除、お茶の準備、 弁当の準備、書類の発送受付、電話の取次、朝夕用度品の 引渡しが主な仕事だった。冬の朝の掃除は先ずストーブに 火をつけ、それから、十個余の一斗缶を半分に切った火鉢に 炭火を入れる、これを各人の机の下に置く。それが済むと 床と机の掃除、床に水を撒くと忽ち凍ってしまう寒さで零下 十度を越す日が数日あった。社員の来るまでに準備をする ため午前五時三十分には出勤するよう努めた。帰りも全員 帰ってからに成ると毎日午後六時三十分くらいになった。 しかし学校で早くから遅くまでやっていたのでそんなに 苦にならなかった。
用度品の引き渡し、朝七時を過ぎると伝票を持った作業員が 次々とやって来る、用度品は三、四〇〇種類の名前と品物 を覚えるのも大変で、伝票の中には[有ゲタ]と書いた品名 が出て来た。何に使うのかと聞いてみると、ベルトを接ぐ ものだとのこと。よく調べてみるとベルトレーシングの商標 に鰐のマークが付いて[アリゲータ]と書いて有った。 こんな伝票が何枚かでてきて悩まされた。送られる。 文箱は大小あって、鉄製の頑丈なもので、重さも一〇キロから 三〇キロ近くあった。

金砂ダム建設現場

電話は公衆電話ではなく、社内電話だった、一日中鳴り通し で全部で二〇種類位を符号で呼び出す様になっていた。
・・ー・・ ー・ ・ー ・・・ ・・・ー
・・・・
ー・・・
という具合にベルを聞き分けた。柱に掛かった電話機が 余り高くて背が届かなかった。送話機の真下でモシモシと 言うため、先方には通じない。先輩が見かねて、大工に 依頼して角材の切れ端を貰って電話機の下に置いた。やっと それで電話が出来るようになった。夕方になると二の番の 作業員が来る、用度品の受け渡しが始まる。こんな仕事を 一年近くやった。
岩城鉱業株式会社 佐々連鉱山
本社 神戸市
社長 岩城卯吉
常務 岩城古三郎

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