50 青森県八光鉱山貫通測量
六日から青森県西津軽郡西目屋村の八光鉱山の測量に行く
事になった。石川、伊藤秀男の二名が出発した。東京本社
で打ち合わせを行い、拠点になってる弘前まで行く事になった。
八光鉱山は仙台支店の担当で現地には佐々連鉱山の採鉱課長
だった深堀仁氏が居た。又作業は鹿島建設が一手に請負って
やっている。各作業場は何ヶ所かに分かれて実施している。
現場までは西目屋村から三〇キロ近く山の奥に入って行く。
谷間に作業小屋が作られそこで全員寝起きして作業をやっている。
飯場の親方が全実権を持って食事は言うに及ばず、煙草、
酒肴等も配給のようにやっている様で、物資はトラックで
毎日西目屋まで行っている様だった。
我々も弘前の駅前で山隠りの準備をした。弘前運送(株)で
人夫六名、十日分の食糧、炊事道具寝具、測量資材を積込んで
現地に向った。測量班の拠点は更に五キロ位上流になった、
昔調査のため建てた小屋があり、これを利用する事にした。
風呂もドラムかんを利用したのが有った。
八光鉱山露頭付近の旧坑 深堀所長
人夫の中に番割りが出来ている様で食事作りも決っていて 十日分を割振ってやって呉れるようで安心した。 朝の味噌汁に入れる野菜は山菜が沢山有るのでこれを充分 に利用した。又沢には山魚が沢山居て人が入っていないので 簡単に取る事が出来たが時間がない一度だけご馳走にありついた。 全山国有林の原始林で腐倒木にはキノコが沢山生えて居る ところもあった。六月と言うのに谷間には雪が残っていた。 又日当たりの良い処ではマムシを見つけた。 最初の一日は飯場でお世話になった。話をしていると飯場の 親方が宇摩郡出身で奥さんは金砂村出身との事私の家の事も 良く知っているとの事、こんな青森県の山の奥で同村の方に 会うとは奇遇である。 現地調査の結果、山の中を中心線を設定してやるか、沢沿い にやるか二つの方法が考えられたが、伐採の少ない沢沿いで 測量する事に決定した。 予定日数一っぱいで測量を終えて帰りは弘前と大鰐温泉で 作業の垢を落して帰社した。 その後の報告では測量は正確だったとの事安心した。
八光鉱山事務所と探鉱坑口